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DNAが導いた冬の頂点 RSS

2016年12月29日 19時49分

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大混戦と予想されていたウインターカップ2016の男子だったが、気がつけば高校総体1位と2位による再戦となり、結果は高校総体に続き、福岡第一が81-78で東山を破った。11年ぶり2回目の優勝である。
チームをけん引したのは、双子の④重冨 周希選手と⑤友希選手だ。

意識下で刺激し合いながら、お互いを高め合った④重冨 周希選手(左)と⑤友希選手

意識下で刺激し合いながら、お互いを高め合った④重冨 周希選手(左)と⑤友希選手

ティップオフ直前のスタメン紹介でもお互いがハイタッチをすることなく、むしろ整列時には背番号の4番と5番が自然と離れていく。優勝が決まっても抱き合うことなく、試合後にコート上で行われた優勝チームインタビューでも、握手はおろか、目さえも合わせなかった。照れもあるのだろうが、それが彼らの生きざまなのかもしれない。好むと好まざるにかかわらず、生まれたときからずっと一緒なのだ。仲良く育ち、仲良くケンカを繰り返してきた。

それでも同級生の⑧土居 光選手は「驚いたのは寝相がまったく一緒だったことです。そのときDNAってすごいなって思いました」と笑うほど、彼らは同じ染色体で結ばれている。

一方で”双子だから”という理由だけで周囲から注目され、比較もされてきたはずだ。両親は平等に愛情を注いでいるが、彼ら自身は一個人として見てほしいという思いを強く持っていたに違いない。今も自宅から学校に通っているが、部屋は別で、登校時間も「微妙にずらしています」と、弟でキャプテンの④周希選手は言う。

それでも同じくバスケットボールというスポーツを選択し、どこかで意識しながら切磋琢磨してきたことが、高校バスケット界きってのドリブラーとなり、相手チームに脅威を与える存在となった。
自身も双子の父親である井手口 孝コーチが「適当に投げているようだけど、それがナイスパスになる。“息が合う”を通り越すプレイがあります」と言うとおり、そのコンビネーションは誰が教えなくとも、DNAレベルで通じ合っているのだ。

キャプテンであり、ポイントガードでもあった④重冨 周希選手がチームを引っ張った

キャプテンであり、ポイントガードでもあった④重冨 周希選手がチームを引っ張った

ただ難点がなかったわけではない。同じくアウトサイドシュートを得意としていなかったのだ。それが夏の高校総体以降の課題でもあった。もちろんそれに取り組んできていたが、今大会の準決勝までは高確率に決めきれていなかった。

しかし東山(京都)との決勝戦では、④周希選手が3本打って3本の、⑤友希選手も確率こそ25%だが2本の3Pシュートを、それぞれ沈めている。
東山の大澤 徹也コーチも「ウチとしては彼らのドライブで勢いに乗せるのが嫌だったので、一定の距離を保って守るように指示しました。決められたことは誤算ですが、彼らのほうが一枚上手でした」と脱帽せざるをえなかった。
そのアウトサイドシュートについて④周希選手が「周りから『入らない』と思われているので、決勝戦では思い切り打つことを心がけた。それがどんどん入ってよかった」と言えば、⑤友希選手は「高校総体から3ポイントシュートやジャンプシュートの練習をしてきたので、最後の試合でその成果が出て、決まったのだと思います」と言う。
得意なプレイが同じであれば、弱点も同じ。別々に練習してきたのだろうが、結果を出す場面も同じというのは、DNAを通り越して、2人の運命なのかもしれない。

得意でなかったジャンプシュートを克服し、チームを優勝に導いた⑤重冨 友希選手

得意でなかったジャンプシュートを克服し、チームを優勝に導いた⑤重冨 友希選手

福岡市立西福岡中学時代から彼らのことを知っていた井手口コーチは、当初こそ「別の高校に進学したほうがいいのではないか」と両親にアドバイスを送っていたという。しかし2人が一緒にプレイするところを目の当たりにした途端、その考えを覆し、「1+1が3にも4にもなるようにしよう」と自身が預かることにしたという。

それから3年の月日を経て、彼らは高校男子バスケットボール界の頂点に立った。一緒の高校でプレイしてよかったかと聞くと、④周希選手はこう答えた。
「いいことも、悪いこともありました。ただお互いの言いたいことを言い合うことでわかりあえたところもあります。ライバルではありませんが、それでもわかり合うところがある間柄です」

2人は卒業後、そろって同じ大学に進学する。寮に入るにせよ、アパートを借りるにせよ、別々の部屋を希望するだろう。それでも彼らの醸し出すハーモニーが乱れることはない。たとえケンカをしていても、コートの上に立てば、おのずと体が反応してしまうからだ。年の違う兄弟とは異なる、それが双子なのである。

幟が示すとおり、優勝を遂げるために福岡第一(高校総体1位)は最後まで走り抜いた

幟が示すとおり、優勝を遂げるために福岡第一(高校総体1位)は最後まで走り抜いた

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