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同門対決を制した兄弟子の貫禄 RSS

2016年12月23日 19時39分

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残り1.2秒で同点に追いついた開催地・実践学園だったが、全国大会初勝利は来年度以降にお預けとなった。近畿大学附属との1回戦は、延長戦の末に63-70で敗れた。

ペイントエリア内での駆け引きをする近畿大学附属⑤西野 曜選手(右)と実践学園⑪小玉 大智選手

ペイントエリア内での駆け引きをする近畿大学附属⑤西野 曜選手(右)と実践学園⑪小玉 大智選手

大阪・近畿大学附属には197cmの⑤西野 曜選手がいる。男子U-18日本代表のメンバーであり、7月下旬のFIBA ASIA U-18選手権で準優勝を経験している今大会注目のセンターだ。対する開催地代表・実践学園は、夏まで190cmのセンターがいたが、語学留学のためチームを離れ、今大会は大幅にサイズダウン。センターは185cmの1年生⑪小玉 大智選手が務めた。しかし彼は昨年度のジュニアエリートアカデミー(現:ジュニアユースアカデミー)に参加し、トーステン・ロイブルコーチから指導を受けている。ロイブルコーチは男子U-18日本代表チームのヘッドコーチでもあり、小玉選手と西野選手は同じ「ロイブル門下生」ということになる。

身長で12cmで劣っている小玉選手だが、八王子学園八王子のドゥドゥ ゲイ(203cm)と対戦したことがあり、その対戦時と同様に、近畿大学付属の西野選手に対してもプレッシャーをかけようと考えていた。しかしそれが上手くできなかったと言う。
「(西野選手は)確実に自分の勝負できるところで勝負してきて、自分のやるべきことを理解していたので、守りづらかったです」

ベッタリと張り付いたディフェンスも、1つ目のファウルを吹かれたときに審判から過度の身体接触を注意され、そこから間合いを詰められなくなった。
「自分が思い切り体をぶつけていっても、相手はやり返して来ないので、どうしても自分に対する審判の印象が悪くなったんだと思います」

身長差を考えると、普通に守っても勝機は少ない。ならば精神的にイライラさせようと考えるのは、小さいセンターがまず考えることだが「相手のほうが一枚上手でした」。試合後にそう語れる小玉選手は1年生とは思えない冷静さだが、一方でペイントエリア内での駆け引きという面では、やはり経験の少ない1年生だった。

対する西野選手は、「僕がロイブルコーチから買われているのはずる賢さ」だと認める。197cmの彼だが、真正面からぶつかっていくのではなく、フェイントを巧みに利用しながら、相手の裏をかく。それこそが彼の得意とするプレイであり、FIBA ASIA U-18選手権を通して、彼が磨いたところでもある。

小玉選手は西野選手に対してパワーで勝負を仕掛け、精神的に追い詰めようとしたが、その西野選手は「パワーで押し込んでこられるほうが抜きやすいんです」と言う。相手の力を利用して“いなす”ことで、その力を無にしてしまおうと考えていたのだ。そのあたりのしたたかさ、冷静さもまた3年生の西野選手のほうが一枚上手だった。

高校総体では西野選手がFIBA ASIA U-18選手権に参戦している間に敗れていてしまったが、それでも彼はこの大会を自分一人の力でチームを勝たせようなどと考えていない。もちろんエースとしての責任感はあるだろう。しかし「ほかにも得点を取れる選手はいるので、僕は無理には攻めていかないです」と、あくまでもチーム内での役割に徹し、そのなかで必要があれば得点を取っていくというスタンスなのだ。

追いつかれて突入した延長戦も「ポジティブに捉えて、楽しんでいこうとみんなが笑顔でできたことがよかった」と振り返る。エースの、その飄々とした態度がチームに安心感を与え、追いすがる実践学園を振り切る要因にもなったのだろう。

「先輩たちに一勝をプレゼントできなくて、すごく悔しいです」
そう言って涙を流す小玉選手だったが、同じ門下の先輩からは高校バスケの厳しさと、センターとしての駆け引きを学ぶゲームになったはずだ。

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