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執念が生んだ2点の差 RSS

2016年12月25日 21時34分

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「二桁のリードをしているときは先の夢を見ていたけど、最後に追い詰められたときは逆の夢を見ました。明日、宿舎を引き払わなければいけないのかなと。そんなこともチラリと頭をよぎりましたが、勝ってくれたあの子たちの執念に感謝です。こういう勝利は間違いなく執念です」
延長戦の末に第4シードの県立福島南(福島)を62-60で破った洛南(京都)の吉田 裕司コーチは、ゲームをそう振り返った。

力がある者同士の好カードはしかし、お互いがシュートを決めきれず、激しいディフェンスにターンオーバーを繰り返す、重苦しいゲーム展開となった。第4ピリオドには洛南が二桁のリードを奪う場面もあったが、「タイムアウトでコントロールしたつもりが、選手たちの固さにつながってしまった」と吉田コーチが言うとおり、そこから洛南から思い切りのよさが消えてしまう。一方の県立福島南にとっては、背中を押す力強い風が吹きつけてきた。

延長戦に入っても、先に得点を動かしたのは県立福島南。追いついた者の強みで一気に畳みかけたいところだったが、「バスケットボールはチームみんなで組み立てるもの。それまでも試合に起用しているので、(後から出ていったメンバーも)臆することなく入り込めた(吉田コーチ)」と言う洛南が、チーム全員の力でその風向きを変えた。

男子U-18日本代表のチームメイトでもある県立福島南④水野 幹太選手(右)と、洛南⑤津屋 一球選手のマッチアップ

男子U-18日本代表のチームメイトでもある県立福島南④水野 幹太選手(右)と、洛南⑤津屋 一球選手のマッチアップ

終わってみれば、たったの2点差。しかし天国と地獄ほどの差がある2点である。

その差を洛南のエース⑤津屋 一球選手が「第4ピリオドが終わってベンチに戻ったときに『気持ちでは負けない』とみんなで言い合いました。その差だと思います」と言えば、県立福島南のエース④水野 幹太選手は「自分が最後にチャージングになるなど、自分が、自分がという意識して、仲間を信じきれなかったところに、その差が出たのかなと思います」と下を向く。
2人は男子U-18日本代表チームでもチームメイトであり、プライベートでも仲が良いという。それだけに序盤のマッチアップは文字どおりの火花が飛び散り合い、それがお互いのプレイを硬くする結果になったのかもしれない。

ただそのときに、洛南は④柳川 幹也選手や⑩津田 誠人選手の得点、⑦久納 有清選手のリバウンドなど、それぞれが個々の役割に徹し続けていた。ベンチメンバーも次々にコートに立ち、大きな成果は得られないものの、主力を休ませることはできていた。対する県立福島南も、⑥木口 雄之亮選手の得点や⑦半澤 凌太選手のリバウンドなどで対抗したが、これまで築いてきた主力中心のチームスタイルに、ほんの少しだけ綻びがあったように思われる。

県立福島南の⑤水野選手は言う。
「自分たちはちょっと上を見すぎたかもしれません。もちろん一戦一戦きちんとやっていこうと言ってはいたんですけど、練習を含めて、どこかに隙があったんじゃないかなと」

一方の洛南は、今夏の高校総体に出場できないなど苦しい日々を過ごしていた。だからこそ、「東山という(府内の)大きな壁はあったけど、僕らも全国でやれるんだということを見せつけたかった(津屋選手)」と、ベンチやスタンドにいるメンバーを含めた全員で泥臭く立ち向かった。
「それを今日のゲームで証明できたと思います」と、津屋選手はそう胸を張る。

高校総体でベスト4に入ったことで、ウインターカップの頂点も視界に入った県立福島南と、高校総体に出場できず、もがき苦しみながらも、自分たちの力を信じて、それを出すことにだけ集中できた洛南。全国トップクラスの力を持つチーム同士の2回戦は、吉田コーチが言うように、全国大会で勝つことへの“執念”がその差を生んだと言えよう。

苦難の1年を耐え、2勝目を挙げた洛南

苦難の1年を耐え、2勝目を挙げた洛南

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