⑤高原 晟也選手の得点も土浦日本大学の生命線だ

昨年のウインターカップで、準優勝を果たした茨城・土浦日本大学。その水色のユニフォームが、当時大会2連覇中だった明成(宮城)を最後の最後まで苦しめた光景を、覚えているファンも少なくないだろう。

だが、そのときの主力選手がごっそり卒業した今年は、インサイド陣が経験の浅い1年生になったこともあり、苦労も多かった。
新チームになって間もない2月の関東新人大会では、エースの⑤杉本 天昇選手が60得点という驚異の活躍を見せて優勝したが、裏を返せば、“勝つも負けるも杉本選手次第”ということ。6月の関東大会では桐光学園(神奈川)に敗れて2回戦敗退、インターハイでは、同時期に行われた「第24回FIBA ASIA U-18男子バスケットボール選手権大会」に出場する杉本選手を欠いて、まさかの1回戦敗退となった。

だが、このウインターカップでは、それが一味違っていた。それが如実に表れたのが、ベスト8を懸けた今日の3回戦、埼玉・正智深谷との試合だ。

ともに同じ関東ブロックとあって、よく知るチーム同士。序盤から激しい火花が散ったが、土浦日本大学は⑤杉本選手が厳しいマークに遭い、フリースローを獲得してもきっちり決め切れないなど、なかなか調子を上げられないでいた。一方の正智深谷は、第1ピリオドだけで5本の3Pシュートを決めるなどシュートが好調で、第1リオドを終えて25−17と主導権を握る。

だが第2ピリオドに風向きが変わった。ここで気を吐いたのが、土浦日本大学の2年生、⑩高原 晟也選手だ。
「初戦と2回戦は自分の調子が上がらず(杉本)天昇さんと(④菅原)輝さんに助けてもらったので、ここで自分が頑張らなきゃいけないと思いました」と、アグレッシブなディフェンスでルーズボールにも果敢に飛び込む。ひとたびボールを奪えば、あっという間に速攻や3Pシュートを決め、このピリオドだけで12得点。この高原選手の奮起に促されるように、ディフェンスの足が動き始めた土浦日本大学は、このピリオドを12失点に抑え、前半を終えて46−37と形勢逆転に成功した。

勝負どころの激しいルーズボール争いが勝敗を左右した

この展開は、土浦日本大学にとって嬉しい誤算だったようだ。佐藤 豊コーチは「前半を競って終われれば、後半はうちの動きや体の強さについて来られなくなって、バテるだろうと考えていました。だから『一桁差に縮めて終われればいいよ』と言っていたんだけど、逆にリードできたから、選手たちも気持ちが楽になったと思います」と振り返る。

40得点を挙げた正智深谷④山口 颯斗選手だったが初のベスト8入りにはならず

こうして優位な状況で後半に入った土浦日本大学は、杉本選手も第3ピリオドだけで18得点を挙げるなど、完全に復調。また、⑮吉田 崇紘選手や⑧高橋 優人選手ら、インサイド陣もリバウンドに奮闘した。高さのある正智深谷を相手にも、空中戦で互角の戦いを演じ、そうして外に弾かれたボールを、土浦日本大学のガード陣が抜群の球際の強さで確実にマイボールにしたのだ。第3ピリオドを終えて、気付けばそのリードは30点。その後、最後まで諦めない正智深谷に12点差まで追い上げられたものの、95−83で振り切り、土浦日本大学がベスト8進出を決めた。

終わってみれば、⑤杉本選手が34得点、⑩高原選手が36得点を挙げたが、数字に残らないところでも一人ひとりの良さが光った試合だった。佐藤 豊コーチは、第4ピリオドで追い上げられたことに渋い表情を見せながらも、「うちは試合を重ねながら成長していると思います。まさに1年生の吉田とか、センター陣がそう。2年生の新山(航希)だって、本格的に試合で使い始めたのは今大会からだけど、徐々に良くなっています」と言う。

経験の浅いチームに生まれ変わったということは、それだけ“伸びしろ”もあるということだ。このウインターカップでも、勝ち上がりながら、試合の中でも成長している。苦難の1年を送ってきた土浦日本大学は、いまや杉本選手だけのチームではない。全員が、厳しいことで知られる土浦日本大学の練習を乗り越え、鍛えられてきた選手たちだからだ。

次の準々決勝は、石川・北陸学院と戦うことになったが、「対戦したことのない相手だから、どうなるか。相手は杉本を抑えに来るだろうけど、やるだけやって、ダメならそれまでです。精一杯頑張ります」と、佐藤コーチは言う。
昨日より今日、今日より明日と、日々成長中の土浦日本大学が、どこまで上り詰められるか注目したい。