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王者を苦しめた“大物食い”チーム RSS

2016年12月25日 21時24分

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1年前の話だが、昨年のウインターカップの中で印象に残る試合の一つと言えば、2回戦の福岡大学附属大濠(福岡)と中部大学第一(愛知)の試合だろう。延長戦にもつれる激闘の末、優勝候補の一つと目された福岡大学附属大濠が初戦敗退。一方の中部大学第一が、勢いそのままにベスト4まで勝ち上がったことは、記憶に新しい。

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中部大学第一の2年生エース⑨坂本 聖芽選手は果敢に攻めて23得点

さて、そんな中部大学第一は、今年のウインターカップでも2回戦でインターハイ王者・福岡第一と対戦することになった。試合前、「どうして毎年うちばっかり…」と、苦笑いで抽選による過酷な運命を嘆いていた常田 健コーチだったが、そのあとで、こうも続けた。「福岡第一とまた戦えることを、選手たちは楽しみにしているみたいです」

そう、今年のインターハイで、中部大学第一が敗れたのが福岡第一だった。そのときは前半こそ競り合ったが、後半は福岡第一のスピードについていけずに失速し、引き離される形に。それだけに、リベンジに燃える並々ならぬ思い、全てを出し切る気持ちでこの2回戦に臨んだのだ。中部大学第一は1回戦の日本航空戦のあと、中1日が空いたが、「みんなで『今日の調整は、明日勝つための調整だ』『絶対に勝とう』と言い続けて、かなりモチベーションを上げていました」と、⑤ディクソン ジュニア タリキ選手は言う。

その気迫が、試合開始からプレイにも全面に表れた。徹底的に中を固めたディフェンスで相手にドライブを許さず、リバウンドにも力強く飛び込んで流れを渡さない。初戦とあって動きの硬い福岡第一を尻目に、相手のお株を奪うような速攻を次々と繰り出し、第3ピリオド終了時点で69−57と12点差をつけることに成功した。

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第4ピリオド、④重冨 周希選手を中心とした福岡第一の追い上げは圧巻だった

しかし、福岡第一がここから驚異的な追い上げを見せる。中部大学第一のシュートが落ちた時間帯に、持ち前のスピードを生かして④重冨 周希選手、⑤重冨 友希選手らが次々に得点。なんと、開始3分たたないうちに福岡第一は18得点をたたき出し、その間に中部大学第一は僅か2得点。あっという間に追いつかれてしまったのだ。

そこからは、まさに意地と意地とのぶつかり合い。めまぐるしい攻防が繰り広げられたが、僅かに勢いで勝る形となったのは、大きなビハインドを跳ね返した福岡第一だった。最後はリードを落ち着いて守り切り、84−80で勝負あり。福岡第一がインターハイ王者の貫禄を見せ、中部大学第一は、惜しくも2年連続の“大物食い”とはならなかった。

試合後、「逃した魚は大きいですね…」と、悔しさをにじませた常田コーチ。それでも、「練習してきたことを出して、十分に戦えました。最後は僕の力不足でチームを勝たせられなかっただけで、選手たちは、今シーズンで1番いいバスケットボールをやってくれたかもしれません。よく頑張ってくれました」と、選手たちを称えた。

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「3年間で、打たれ強くなりメンタル面も成長できた」と中部大学第一⑤ディクソン ジュニア タリキ選手

悔しい逆転負けに、涙が止まらない選手たちだったが、主力には下級生も多く、先につながる貴重な経験になったはずだ。3年生のディクソン選手は、そんな後輩たちに向けて、自身の経験を振り返りながらこうメッセージを送った。

「去年は3年生4人と自分1人で試合に出ることが多かったので、先輩たちについていくだけでしたが、今年は2年生主体のチーム。2年生が焦ったときに自分が引っ張らなきゃいけなかったのに、なかなかそれがうまくできずに、ずっと去年の3年生の偉大さを感じていました。結果が出なかったのは、3年生の責任。あらためて、“チームで一番大事なのは3年生”だと痛感したので、それを今の2年生たちは来年意識して、頑張ってもらいたいです」

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