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たった一人の3年生が立った初の舞台 RSS

2016年12月23日 17時03分

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女子出場チーム50校のうち、初出場のチームは僅か2校。そのうち、インターハイを含めても初の全国大会となった唯一のチームが、香川・県立高瀬だ。

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下級生主体ながら初出場を果たした香川・県立高瀬

「1学年の人数も150人ほどで、田舎の小さな普通の高校です」と大西 亜紀コーチがいう県立高瀬にとって、長年、全国の舞台は遠く離れた夢の世界だった。だが、昨年初めて県総体の決勝(vs英明)に進出したところから、「全国が手の届くところだと感じられて、意識が変わりました」と大西コーチ。だからこそ、今年も『インターハイ出場&ウインターカップ出場』を目標に掲げ、ますます厳しい練習を積んで全国の舞台を追い求めてきた。

とはいえ、全国への道のりは容易いものではなかった。
今年のインターハイ予選は、またしても決勝(vs高松第一)で敗戦。あと7点届かず、全国への道のりは閉ざされてしまった。

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ベンチに下がっても声を出して盛り上げる④高田 咲希選手

そのインターハイ予選で、相当悔しさを募らせていた選手がいた。3年生の④高田 咲希選手だ。
「決勝で負けてしまい、“先生を全国に連れて行く”という約束が果たせなかったことが悔しくて…このままじゃ終われないと思って、残ることにしました」と高田選手。ほかの3年生たちが全員引退する中、ただ一人、チームに残ることを決意したのだ。

もともと下級生主体のチームとはいえ、覚悟を決めて引退時期を延ばした④高田選手の存在は大きかったようだ。
「明るくて、みんなの太陽のような存在。3年生一人になっても、下級生とすごく仲良く馴染んでいました」と大西コーチ。プレイでも、持ち味の3Pシュートに加えて、「粘り強さはチームで一番」と大西コーチが太鼓判を押すディフェンス力で貢献した。

そして高田選手を中心にディフェンスを磨いた県立高瀬は、ウインターカップ予選で相手を40失点に抑えてリベンジ達成。追い求めてきた全国への扉を、ついにこじ開けたのだ。

こうして迎えた、ウインターカップ初戦。初出場のチームが全国独特の空気に飲まれて浮き足立つことはよくあることだが、高瀬の場合、それは杞憂に終わった。立ち上がりから外角シュートを次々に決め、東北を代表する伝統校、宮城・聖和学園に粘り強く食らいつく。

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下級生主体の香川・県立高瀬は来年の戦いにも期待だ

それでも、聖和学園の方が一枚上手だった。県立高瀬の3Pシュート攻勢にも慌てず、リバウンドをもぎ取って攻防で主導権を握る。出場校の中で最も平均身長が低い県立高瀬は、激しいディフェンスを見せるも、なかなかリバウンドを奪えない。第2ピリオド以降なかなか得点を伸ばせず、最後は43‐90で力尽きた。

全国大会初勝利とはならなかったものの、高校最後の試合を終えた高田選手の顔に悔いはなかった。
「下級生たちのお陰で、こんなに大きな舞台で最後にプレイすることができました。応援にもたくさんの人が香川から来てくれて、本当に感謝の気持ちしかありません。来年も、私一人が抜けるだけなので、強いチームになれると思います」。
涙を浮かべたその目は、後輩たちへの感謝と期待に満ちていた。

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