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13人で受け継いだ“カタリナバスケ” RSS

2016年12月24日 12時12分

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膝のケガから復帰した聖カタリナ学園④江良 萌香選手

毎年、その黄色いユニフォームに多くの観客が魅了されてきた。サイズはないものの、すばしっこいディフェンスやピシャリと決まる3Pシュート、鮮やかなボールハンドリングで相手を翻弄する――。愛媛県の聖カタリナ学園は、そんなバスケットボールで知られる強豪チームだ。

ウインターカップでも2012年に準優勝、翌13年・14年は3位、15年は4位と、近年ベスト4に定着し、好成績を挙げてきた。だが、そんな聖カタリナ学園をアクシデントが襲ったのは今年6月のこと。女子U-18日本代表候補にも選ばれていた④江良 萌香選手が、左膝の大ケガに見舞われたのだ。エースを欠く中で挑んだインターハイ、ベスト16という結果は、ここ数年上位進出が常だった聖カタリナ学園にとって、納得できるものではなかった。

雪辱を誓い、迎えたウインターカップ。初戦の県立長崎西戦も大接戦となったが、4点差でなんとか勝ち切った。この試合、インターハイでも活躍が目立ったルーキー⑭梅木 千夏選手がチームハイの20得点を挙げ、夏からのさらなるレベルアップを証明。また何より、長く戦線離脱していた江良選手が待望の復帰を果たしたことは、心身の面で、チームのさらなる追い風となった。

ようやく役者が揃った状況で、2回戦へと駒を進めた聖カタリナ学園。だが相手は、それ以上の強敵だった。それが関東大会でも優勝を果たし、東京都予選でも圧倒的な強さを見せた八雲学園だ。

この八雲学園、インターハイは桜花学園(愛知)に敗れてベスト16に終わったものの、その強さは今シーズンかなり注目されていた。④佐藤 由璃果選手(176cm)、⑤奥山 理々嘉選手(180cm)、⑦吉田 舞衣選手(176cm)の“ビッグ3”のオフェンス能力は全国屈指で、さらに日頃の練習でディフェンスと走力を鍛え上げ、より隙のないチームへと成長していたのだ。

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外角シュートや高さを生かして得点した八雲学園⑦吉田 舞衣選手

その八雲学園に対して聖カタリナ学園は、試合の序盤こそディフェンスから速い展開に持ち込み互角の勝負を演じたが、徐々にリードを引き離されてしまう。八雲学園の高さがボディブローのように聖カタリナ学園を苦しめ、第3ピリオド終了時点で27点差と、大きく点差が開いた。

それでも、聖カタリナ学園に“諦める”という選択肢はなかった。オールコートで必死のディフェンスを見せ、ダブルチームでボールを奪い、外れても外れても、シュートを狙い続ける。どんなに点差が離れても、その闘志が切れることはない。だが八雲学園も、点の取り合いなら一歩も引かず、むしろリバウンドから速攻に走って確実に得点を重ねていく。最終的に57-89でタイムアップ。聖カタリナ学園の奮闘も、ここまでとなった。

「ディフェンスで抑えたいポイントをうまく抑えられず、オフェンスでも『攻めなきゃ』という気持ちが空回りしてしまった部分がありました。そこで冷静に、あともう1本パスが出せれば…」と、聖カタリナ学園・後藤 良太コーチは反省の弁。だが、この1年戦ってきた3年生のことを聞けば、「今試合に出ている3年生は、ほとんどがBチームから上がってきた選手たち。スター選手は誰もいないけれど、今までの偉大な先輩たちの伝統を受け継ごうと、よく頑張ってくれたと思います」と、選手たちを称える。

聖カタリナ学園は悔しい2回戦敗退となった

聖カタリナ学園は悔しい2回戦敗退となった

また、キャプテンの江良選手も、溢れる涙をぬぐいながらこう話す。
「ケガでみんなに迷惑をかけ、悔いの残る1年でした。でも3年生13人で、たくさん話し合って、チームを良くしようと考え続けてきた1年でもありました。そういう姿勢を後輩たちが見て、これからも先輩たちのような“カタリナバスケ”を引き継いでいってほしいです」

追い求めた結果は出なかった。だがその戦いぶりが、これまでの聖カタリナ学園の名に恥じないものであったことは間違いない。さまざまな苦労を乗り越えてきた3年生たちの背中を見て、聖カタリナ学園の伝統は後輩たちに受け継がれていくだろう。その黄色いユニフォームが、再びメインコートを駆け回るその日まで――。

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