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現地レポート

楽しく粘って、ウインターカップ初勝利! RSS

2016年12月23日 14時46分

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初めてのウインターカップ、初めての東京体育館、そして初めての勝利――豊富なキャリアがなくても、相手を凌駕するサイズがなくても、自分たちのバスケットボールを信じて貫けば、全国的に有名な強豪校を倒すこともできる。そんなゲームだった。

三重・県立いなべ総合学園が、福井・県立足羽を87-84で下し、2回戦進出を決めた。

序盤から鍛えられたディフェンスとルーズボールへの執着、弱みであるリバウンドでさえも相手のビッグマンに対して2人、3人で詰め寄り、ボールに食らいつく。牙をむく県立いなべ総合学園に対して、県立足羽は気持ちが引いていたようにも見える。それが前半8点リードで折り返した要因だろう。
しかし県立足羽もウインターカップでメダルを獲得したことのある強豪校。女子U-18日本代表のメンバーもいる。後半、怒涛の反撃で逆転すると、県立いなべ総合学園の足もボールも止まり始めた。
このまま終わってしまうのか……

しかし、チームを率いる桜井 則之コーチが「今の3年生には不思議な力がある。粘り強いというか、最後には勝ち切る力がある」と言うとおり、粘り強くついていき、第4ピリオドの終盤、ついに同点に追いついた。
「彼女たちはあまり動じないんです。委縮もしないけど、調子にも乗らない。言葉としてはおかしいけど、“情緒安定”というか、しっかりしているんです」

 そのため、桜井コーチはプレイの選択を選手自身に任せている。途中でディフェンスをマンツーマンからゾーンに変えるけれども、そのタイミングはキミたちに任せるよ、と。それは決して簡単なことではない。選手の自立を促すといえばかっこよいが、それをするためにはどんな状況であっても、ゲームの流れを全員が把握し、共有していなければならない。それを経験の少ない選手に任せるリスクはある。それでも桜井コーチは選手たちを信じ、その策を取った。

選手のその期待に応える。キャプテンの④蛭川 文香選手は後半の追い上げについて、こう言っている。
「気持ちと、コートにいる選手もベンチメンバーもみんなが声を掛け合いました。特にディフェンスで声が出て、流れを作れたと思います」
一人ひとりの経験は少なくても、それがひとつの塊になれば逆転への流れも作り出せるというわけだ。

さらに言えば、粘るためのスタミナも求められる。それがなければ正しい判断も、正しいプレイもできない。その点については、高校総体での反省が生かされた。

「高校総体で東京成徳大学に敗れたとき、第4ピリオドで引き離されたんです。東京成徳大学には最後に仕掛けられる脚があったんです。だから今大会に向けて、第4ピリオドで勝負ができるように練習をしてきました」(桜井コーチ)

延長戦に入ると、追いつかれた県立足羽に県立いなべ総合学園の勢いを止めるだけの力は残されていなかった。それは序盤からしっかりとプレッシャーをかけた彼女たちのディフェンスがボディーブローとなっていた証拠である。

「すごいですよね……すごいです。すごいと思います。すごい、すごい」
初出場で、しかも格上と見ていた相手に粘り勝ちし、「すごい」を連発した桜井コーチに対して、蛭川選手は笑顔で言う。
「最初は緊張したけど、時間が経つにつれて楽しくできました。延長戦ですか? 楽しかったです」
初めてのウインターカップ、初めての東京体育館にも動じず、むしろ自分たちのバスケットを楽しめた県立いなべ総合学園は、目標のベスト8まで粘り強く、走り続ける。

弱点のリバウンドに対しても全員が意識することでクリアした県立いなべ総合学園

弱点のリバウンドに対しても全員が意識することでクリアした県立いなべ総合学園

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