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現地レポート

“道を作る人”が挑む3度目の正直 RSS

2016年12月27日 23時16分

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毎年ウインターカップでは翌年の “顔”になりそうな若い選手を見つけることができる。
既に専門誌等では紹介されているが、北陸学院⑫大倉 颯太選手もその第一候補である。彼の魅力は何といっても圧倒的なスコアリング能力。その力は今大会でもいかんなく発揮され、初戦の県立松山工業(愛媛)戦では28得点、3回戦の浜松学院(静岡)戦ではそれを上回る32得点を挙げ、創部4年目のチームを初のメインコートへと導いた。

準々決勝の相手は前回大会の準優勝チーム、土浦日本大学。大会屈指のスコアラーで、2020年の東京オリンピックに向けた「強化重点選手」にも指定された⑤杉本 天昇選手がいるチームだ。
しかし⑫大倉選手は、この試合でも高い集中力を見せて34得点を挙げると、80-65で土浦日本大学を退けて全国ベスト4の扉をこじ開けた。

そんな大倉選手が「彼がいないと僕は活躍できないし、チームもチームとして成り立ちません。頼りにしています」と言うのが、このストーリーの主人公、④小室 悠太郎選手である。高校総体まではキャプテンとしてチームをけん引したが、その後は2年生にその座を譲り、名実ともにバックアップにまわっている。

④小室選手は自身の役割について、こう語る。
「(大倉)颯太らチームのウイングプレイヤーにスクリーンをかけて、しっかりと道を作り、ゴールまで行かせることです。それとリバウンドです」

その言葉どおり、⑫大倉選手らがゴールにアタックできるのは、④小室選手がスクリーンに立ち、厳しくマークするディフェンスをずらしているからだ。
土浦日本大学戦でも大倉選手たちがゴール下で多く得点することができたのは、彼のスクリーンがあればこそなのだ。小室選手自身も「今日はその仕事が徹底してできたと思います」と胸を張る。

⑫大倉 颯太選手らがゴールにアタックできるのは、④小室 悠太郎選手らがいるからこそ

⑫大倉 颯太選手らがゴールにアタックできるのは、④小室 悠太郎選手らがいるからこそ

明日の準決勝の相手は東山(京都)に決定した。高校総体では69-80で敗れ、国民体育大会でも77-89で敗れている相手だ。
「ポイントは自分が⑨カロンジ・カボンゴ パトリック選手を止めることだと思います。控えの留学生も力をつけてきているので、どちらが出てきても、自分の強みである体の強さを生かして、今日みたいにリバウンドを取っていきたいです」

そしてこう続ける。
「3度目の正直を果たしたいと思います」
スコアラーの“道を作る人”は明日も泥にまみれながら、チームの勝利に貢献したいと考えている。

④小室選手のハッスルは、北陸学院の勝利に欠かせない

④小室選手のハッスルは、北陸学院の勝利に欠かせない

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“我”のないチームからの脱却 RSS

2016年12月27日 18時07分

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男子準々決勝、船橋市立船橋(千葉)は、ベスト4進出を懸けてインターハイ王者の福岡第一と対戦した。

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23得点11リバウンドの活躍を見せた福岡第一⑮松崎 裕樹選手

福岡第一と対戦するにあたり、船橋市立船橋の近藤 義行コーチは「相手は王者ですので、まともに戦ったら裏目に出るかなと。開き直って捨てる場所を作ろうと考えて、相手の外角のシュートは捨て、重冨兄弟(④周希、⑤友希)のペネトレイトだけは絶対に抑えようとディフェンスを組み立てました」と対策を練っていた。
そうしたディフェンスが功を奏し、前半を終えて8点差に食らいつくと、第3ピリオドには⑦赤穂 雷太選手がオフェンスリバウンドやアシストで奮闘。その赤穂選手を起点に⑯野﨑 由之選手や⑬保泉 遼選手が得点を挙げ、後半開始5分で同点に追いついた。

だが、王者・福岡第一の壁は高かった。リバウンドから一瞬でリングまで走り込む鮮やかなブレイクは、分かっていながらもなかなか止められず、速攻を止めても④重冨周希選手らのスピードとテクニックを生かした1on1でかき回される。さらに福岡第一は、1年生の⑮松崎 裕樹選手が速攻やドライブなどで躍動。再び流れを引き戻し、10点リードで入った第4ピリオドもそのままリードを保って、最後は79−62でタイムアップとなった。

敗れた船橋市立船橋だったが、試合後、近藤コーチの表情は晴れやかだった。それは、選手たちが、この1年間で心身ともに大きく成長を見せたからである。

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船橋市立船橋⑦赤穂 雷太選手はポイントガードとして大きく成長

振り返れば、春先の船橋市立船橋はチームが噛み合っていなかった。194cmの赤穂選手に、将来を見据えて本格的にポイントガードに挑戦させることになり、得点源を担うのは⑯野﨑選手や⑬保泉選手といった経験の浅い2年生たち。何より、近藤コーチが常々課題に挙げていたのは主力選手たちの“おとなしさ”、それに伴う気持ちの弱さだ。

「例年は“我”の強い選手たちをまとめてチームを作っていくのですが、今年は逆に、“我”がなさすぎるんです。おっとりしているというか、優しすぎるというか…。とにかく真面目で、おとなしい選手ばかりです」と、近藤コーチ自身、いつもと違うチームカラーに戸惑いを隠せなかった。実際、春先の交歓大会では、勝負どころで気持ちの弱さが露呈し、接戦を落とすことも多々あったという。

だが、船橋市立船橋は徐々に変わっていった。赤穂選手のガード化により新しいオフェンスシステムを導入し、チームがなかなか噛み合わない危機感があったからこそ、「例年の2倍練習して、2倍試合をこなしてきました」と近藤コーチ。そうした練習量が、選手たちの自信となり、技術の面だけでなく、メンタルの面の成長も促したのだ。

その中でも、今年頭角を現し、チームに欠かせない大黒柱となったのが3年生のセンター⑤田村 伊織選手だ。肉体改造を図り、体重を10キロ落とした田村選手は、走り合いのラリーにもついていけるようになった。そうしてプレイの幅が広がったことで、周りを見て声をかける役目も田村選手が担えるように。「田村伊織が声を出すと、チームも盛り上がる。あの子がこのチームの“おとなしさ”を打開してくれました」と、近藤コーチも高く評価する。

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福岡第一⑫蔡 錦鈺選手と市立船橋⑤田村 伊織の白熱したマッチアップ

チームとして大きく成長した船橋市立船橋は、結果的に関東大会優勝、インターハイとウインターカップでベスト8という結果を残した。いずれも簡単な試合はなく、関東大会の決勝(vs 正智深谷)は6点差、インターハイ3回戦(vs 光泉)は1点差の接戦を制するなど、力の限りを尽くして積み上げてきた誇れる結果だ。

近藤コーチは、「彼らの持っている力やキャリアから考えれば、最高の結果を出してくれたと思います。厳しい練習にもよくついてきてくれました」と、この1年間苦労を乗り越えてきた選手たちを、手放しに称えた。

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陸上部には負けていられない RSS

2016年12月27日 14時42分

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女子3回戦が行われた12月25日(日)、つまり大阪薫英女学院(大阪)がウインターカップ2016のベスト8進出を決めたその日に、同校の陸上部が都大路を駆け抜け、全国高校駅伝を制した。2年ぶり2度目の栄冠である。折しもバスケット部も全国大会の真っ最中。同じ運動部としては刺激を受けないわけがない。キャプテンの④金田 愛奈選手が言う。
「陸上部の子たちとは3年間同じクラスだったんです。だから優勝を聞いたときはすごいなと思ったし、同じ学校のクラスメイトとして嬉しい反面、運動部で競い合っている立場でいえば、自分たちも負けていられないなって思いました」

だがバスケットボール部が同じように全国制覇を果たすためには、越えなければならない大きな壁がある。高校総体、国体を制し、「高校3冠」に王手をかけている女王・桜花学園だ。16年ぶりの決勝進出をかけて戦う、準決勝の対戦相手である。

伝統の円陣でチームの気持ちをひとつにする大阪薫英女学院

伝統の円陣でチームの気持ちをひとつにする大阪薫英女学院

結論から言えば、大阪薫英女学院は57-81で敗れ、その壁を越えられなかった。
「前半がすべてでしたね」と安藤 香織コーチが言うように、序盤から桜花学園のディフェンスに押し上げられ、練習してきたことができない。むしろ「国民体育大会が終わった後、しっかりと走りきってからボールを受ける練習をしていたのに、みんながボールへ、ボールへと意識して動いていたので、余計に桜花学園はディナイがしやすかった」と④金田選手が振り返るように、ボールが動かず、人も動かず、得点を積み上げられない。前半を終えた時点での23点ビハインドは、桜花学園を相手にすると致命的でもあった。

しかし後半、スタメンの平均身長が170cmを超えるオールラウンダー集団は開き直った。攻守においてアグレッシブさを取り戻し、最大25点まで開いた得点差を13点差に縮める場面もあったが、最後は桜花学園に押し切られてしまった。
「国民体育大会で今年初めて桜花学園(総体1位・愛知)と対戦して、こんなに力の差(56-86)があるのかと思いました。そういう意味では、今回対戦できることは、私たちにとってリベンジの舞台だったんですが、点差は少し詰まったとはいえ、大差で負けているのでやはり悔しいですね(④金田選手)」

金田選手は、もともと自分がキャプテンになるとは思っていなかった。自分でもそういうタイプではないと思っていたし、故・長渡 俊一前コーチも「⑤髙原(春季)がこのチームのキャプテンをやっていきなさい」と言っていたので、⑤髙原選手を支える側にまわっていた。しかし長渡コーチが亡くなり、安藤コーチがその後を継ぐと「あなたがキャプテンをやらなければいけないんじゃないの?」と声を掛けてきた。昨年のことだ。そこで④金田選手は熟考し、今年度のチームがスタートしたときに「私がキャプテンをやります」と安藤コーチに告げたのだという。

「キャプテンなので、コート内の自分がダメなときも声を出して、チームを盛り上げなければいけない。安藤コーチからもそう教わっていたのですが、どうしても自分がダメになると、自分の世界に入ってしまうことが多かったんです。そこで自分がどこまで我慢できるか……この1年間、めっちゃ怒られたし、そこが一番苦労したところです」
今日の桜花学園戦でも苦しい展開のなか、内に入り込みそうな自分を抑え込み、④金田選手はチームを鼓舞し続けた。

最後までチームメイトを鼓舞し続けた大阪薫英女学院のキャプテン④金田 愛奈選手

最後までチームメイトを鼓舞し続けた大阪薫英女学院のキャプテン④金田 愛奈選手

陸上部のように全国の頂点には立てなかったが、明日、銅メダルをかけて3位決定戦を戦う。キャプテンとしての最後のゲームだ。
「桜花学園戦は自分たちが3年間やってきたことを出し切れずに終わったので、ここまできたら最後だし、自分たちのバスケットをやりきって終わりたい。40分間、これまでやってきた思いを3年生が中心になって出し切って、勝ちたいです」

今日は点差が離れた最後の場面を下級生たちに譲ったが、明日は3年生が最後までコートに立って笑顔で終わりたい。色こそ違うが、冬休み明けに陸上部の友人にメダルを見せるためにも――

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